【第一章】地獄の始まり。〜8万円の含み損〜
投資家としての僕に最初の大きな壁が立ちはだかったのは、あの「丸善」での可愛いチキンな一歩を踏み出した、すぐ後のことだ。
調子に乗った僕は次に、誰もが知る巨大企業「イオン(8267)」の株に手を出した。 理由はただ一つ、「こんなに大きな会社が潰れるわけないだろ!」 それだけだった。
結果は、惨敗だった。僕が買ったイオン株はみるみるうちに値を下げ、あっという間に8万円もの「含み損」を抱える、巨大な赤い数字の塊と化した。
【第二章】悪魔の囁き。〜ナンピンという名の、甘いワナ〜
掟があるから、売るに売れない。でも、毎日、その赤い数字を見るたびに、僕のガラスの心は、キリキリと痛んだ。 そんな時、僕の頭の中に、ある悪魔の囁きが聞こえてきたんだ。
「そうだ…。今、もっと、この株を買い増しすれば、平均取得単価が下がって、少し株価が戻っただけで、すぐに、プラスになるんじゃないか…?」と。
今思えばそれは、初心者が一番ハマってはいけない危険なワナだった。
でも、その時の僕はもう正常な判断ができず、我が家の最強のラスボス(妻)に、人生初の「買い増しプレゼン」を挑むことになるのである。
【第三章】決戦のプレゼン。〜VS. 最強のラスボス(妻)〜
そして、僕は、我が家の最強のラスボス(妻)に、人生初の「買い増しプレゼン」を、挑むことになるのである。 僕の、しどろもどろの、プレゼンが、始まった。
「…あのさ、イオンの株なんだけど…。今、すごく、下がってて…。もし、今、買い増しすれば、平均取得単価が、下がって…その…。」
「………。」
「…だ、だから、もう少しだけ、追加で、投資させて、もらえないかな…?」
「イッ、、、イオンは潰れないし、これからもっとイオンを使うと思うんだ。もう少し買うと株主優待の還元率を上げられるんだよ…?」
僕の、情けないプレゼンを聞き終えた、妻。 彼女は、ふぅ、と、一つ、ため息をついて、そして、僕が、予想もしなかった言葉を、言った。
「…分かった。追加で、100万円まで、出していいよ。」
「えっ!?そ、そんなに!?」
【最終章】彼女が、本当の「安全資産」だった。
驚く僕に、彼女は、静かに、本当の理由を、教えてくれた。
「あなたがギャンブルをしたいんじゃなくて、本当に家族のことを考えてくれているのが分かったから。そして何より、職場で嫌な思いをするリスクを背負ってまで、私たちのために育休を取ってくれた、そんなあなたのことを、私は信用しているから。」
…そう、彼女はいつだって僕のこと、お見通しなのだ。
僕が彼女のことを「ラスボス」なんて言っているが、本当は違う。彼女は本当は僕にすごく甘い。
でも、僕がすぐに調子に乗ってちゃらんぽらんになって、お金を湯水のように使ってしまうことを知っているから。僕を守るために、あえて自分を律して、僕に厳しくしてくれているのだ。
(そして、多分、これも、彼女の、手のひらの上なのだ。「信用している。」「これは、私たちのお金だよ。」という言葉で、僕に、最高の「責任感」という名の、首輪をつけてくれていることを、僕は、まだ、この時は、気づいていない…)
僕の妻は、世界で一番優しくて、そして、世界で一番手強い、最高のパートナーである。
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